79話 🐥 新・新興国 働く人を守る仕組み
最近、中国に代わってバングラデシュ製の衣類を良く見かけます。
私も【MADE IN BANGLADESH】の服を持っています。
ZARAで買ったスカートです。
【MADE IN BANGLADESH】です。
ヨーロッパやアメリカ、日本ではユニクロをはじめとするアパレルを中心に多くの企業がバングラデシュに進出しています。
2021年までに中所得国入りを目指すバングラデシュにとって、縫製業はかけがのない産業です。
縫製工場で働く女性
2013年4月24日、
バングラデシュにとって大切な縫製業の現場で悲劇が起こりました。
縫製現場が密集する地区で8階建てのビルが崩壊しました。
縫製現場で働いていた約3000名以上の工員がコンクリートと鉄骨の山に飲まれました。
この事故は、死者1127名、重軽傷者 約2000名という大惨事となりました。
このビルは突然 崩壊したのではありませんでした。
事件が起きる前日に 従業員がビルの柱に大きな亀裂があるのを発見し、警察に通報しました。
警察は
「崩壊の危機が、高いため、ビルへの立ち入りは当面禁止する」
と命令をだしました。
ビルのオーナーは警察が帰った後、建築の専門家??と称する人物を連れて ビルの安全性を検証し??、
「修理は必要だが、すぐに崩壊するリスクはない」
と、言いました。
これを受けて、翌朝、縫製工場の管理者は通常通り操業をすることにしました。
不安と抗議の声を、上げる従業員に対しては、
「専門家??もビルのオーナーも問題ないと言ってる。納期も迫っている。つべこべ言うと、給料は、払わない、働きたくないなら、工場に来なくていいぞ!」
と、脅しをかけ、従業員(多くの若い女性)を持ち場に着かせました。
そして 30分後に悲劇は起きてしまいました。
一方、このビルの1Fに入っていた銀行はマネージャーが、業務停止を 決定し、従業員だけでなく、顧客にも、携帯電話のショートメッセージを使って、危険なビルに近づかないように伝えました。結果、銀行の従業員や顧客には死者も、負傷者も、いませんでした。
崩壊したビルには、さまざまな問題が、ありました。
本来は4階建てで、設計されていたにもかかわらず、届け出も出さずに5階から8階を付け足しました。
そして、かつて沼だった場所にオガクズを、敷きつめただけの地盤にビルを建てたのです。
バングラデシュでは、このような ずさんな、設計や、建設が珍しくないようです。
バングラデシュの人は日常的な生活の中で、建物が崩壊するリスクを知っています。
ビルの上にビルが建つ、路上で雨風にさらされ錆びついた鉄骨が、そのまま建設に使われ、解体した、廃船から得た 鉄くずがビルの建設に再利用されたり、柱を設計より細くしたり、こうした建設が、取り締まりをされることなく、堂々と行われています。
なので、バングラデシュでは、過去にこのような不幸な事故は何度も起きていました。
このような事故が起きると、縫製工場の経営者やビルのオーナーは、当然逮捕されます。
逮捕だけでは縫製工場で働く工員たちの怒りはおさまりません。
バングラデシュでは、このような事故が起こるたびに大規模な暴動が発生します。
関係のない工場や、バス、乗用車にも、投石や火炎瓶をなげ 放火し、無差別に攻撃が加えられます。
なぜ、無関係な人まで巻き込むのか? 工場を破壊したら、働けなくなります。もっと生産的な、方法で、抗議できないかと、誰もが考えると思います。ですが、不条理な状況で働かされていて、やり場のない怒りが爆発する 気持ちもわかります。
こうならないためにどうするか、
JICAの協力を得ながら建築基準が改訂され、
建築基準を実行する体制を整えています。
建築基準を満たす設計やデザイン、建設がされているか、検査する検査員の増員、検査員の研修、違反した建物の罰則など、安全対策を取ってますが、問題はたくさんあります。
危険な既存の建物を、どうするか?
安全な建物に、修繕するのにも建て替えるのにも、多額のお金が必要です。
このような事故が起きてしまうのには、外国のアパレルメーカーが、低いコストで、縫製を依頼してることも問題の1つです。
国際NGOが中心となって、ヨーロッパのH &MやZARAや、アメリカのTommyHilfiger
、日本のユニクロなども加わり、縫製工場の防火体制と建物の安全性向上を目的とするプログラムを行っています。
おおまかな内容は
・取引先の工場の安全性のチェック
・必要な是正措置の勧告と実施状況のモニタリング
・火災訓練や、研修の提供
また、縫製工場側の負担に配慮した価格交渉も行なっています。
バイヤーが一方的な金額を提示するのでは なく、工場側が必要な安全対策を実施しつつ利益を出せる単価の 交渉にあたるようバイヤーには 義務づけらています。
また、ドイツの支援機関であるGIZがバングラデシュのNGOと連携して実施してるウィメンカフェ(41箇所あります)には工場で仕事を終えた女性が、家に帰る途中にたちより一日の疲れを癒しあっています。
そこは、工場で働く女性の学びと交流の場です。
最低賃金、残業代の支払い、産休の確保、病気欠の際の給与支払いなど、NGOの職員から学びます。
あるとき、工場のラインのマネージャーが1日のノルマを300着製造するようにと女性達に言ってきました。
どんなに頑張っても1日に出来る量は150着です。ノルマを達成するのには、倍の時間、働かないと行けません。
しかし、マネージャーは残業代は出せないと言ってます。
そこで、NGOの弁護士と共に工場長と会って話した結果、残業代の支払いとノルマの軽減が実現しました。
ウィメンカフェを立ち上げて以来、日々、学びと交流、そして現場の実践を、通じて女性達が法律が定める権利について理解を深めてきました。
バングラデシュ人は、うまくいかないこと、気に入らないことが あると座り込みやデモ、投石、防火といった方法で訴えます。これにより一般市民や外国人が、巻き添えになって事件が起こります。そして、こうした事件が、国外に報道されて、バングラデシュの、イメージを悪化させてます。それでは、何の利益もありません。
ウィメンカフェに通う女性達のように、問題を対話によって見極めて、学習と協働により解決していく人が どんどん増えていけばバングラデシュが、変わっていくのでしょうね。